気が付けばはや9月。台風シーズン到来で連日の雨とともに、気候も随分と秋めいてきた。
以前、ここに色んなことがあり過ぎて心の休息が必要と書いたが、その節はダイレクトメールなどで安否確認をいただくなど色々とご心配をおかけしてしまった。
周りのことも少し落ち着いてきたし、ブログもここ数ヶ月、今から書くことに関連する投稿へのアクセス数が急増しているので、すでに衆知の事実となったと判断し、このタイミングで投稿したいと思う。
話は遡ること数ヶ月、2022年5月23日のことである。
この日は私が最も敬愛する神戸・元町のビストロ「Bec」の創業11周年記念日。
東京転勤となった私は近い日にアジャストしてお祝いにうかがうつもりだった。
しかし、その予定はとうとう叶うことがなかった。店主・岸本達哉さんが記念日当日に亡くなったのだ。46歳だった。
あまりにも突然で早過ぎる訃報に接し、当初私はその現実を受け止めることができなかった。
最後にBecを訪れたのは亡くなるわずか17日前の5月6日。
ほろ酔い気分で店の前に行くと照明が消えていた。
今日はやっていないのかと思い、またうかがおうと店を通り過ぎたその瞬間、店内の照明が点いたのだった。
状況をすぐに呑み込めなかったのだが、
「なるほど今夜は早じまいして身支度を整えていたのかな。疲れているだろうし、いま挨拶に行くより次回早くからお邪魔してしっかり飲み食いしよう」
そう判断した私は店を後にし、LINEでメッセージを送った。
「先ほどうかがいましたが閉店されていたので、またお邪魔します」
翌日、返信があった。
「おはようございます。またお待ちしていますね」
「ありがとうございます」
亡くなる2,3週間前という切迫感を微塵も感じさせない、いつも通りのやりとりだった。
だが、結果的にこれが最後のやりとりになってしまったのだ。
岸本さんは常々言っていた。
「人間いつ人生最後の日を迎えるか分からない」
あの日のあの時、会えていたら。
あの晩、戻って直接話せていたら。
さまざまな後悔が込み上げてくると同時に、30代の大半を過ごした神戸の大切な居場所がなくなったことに、当初は茫然自失の心境だった。
しかし、Becでできた数多くの友人たちと酒を酌み交わし、岸本さんとの想い出話に花を咲かせたことで、皆、徐々に心の整理がついてきたように感じる。
突然のコメント、失礼致します。
私も、定期的にBecに通っており、最後に伺ったのは、今年の4月でした。
他のお店の方に教えていただき、つい、先日、岸本さんがお亡くなりになったことを、知りました。
亡くなったことを聞いたとき、絶句しました。
4月に伺った際、週休3日にされているであるとか、毎朝、海岸を歩いている(それまでは、プールで泳がれていたはず、、、)といったことから、既に、お病気であったのだと、今更ながら気づきました。
色々なお話を岸本さんとさせていただく中で、ご家族のお話、娘さんのお話を伺っておりました。
私も、Becでデートし、妻が妊娠し、臨月に伺った時には、元気なお子さんを!と励ましていただき、子供が生まれてからは、1人で食事をしつつ、3歳になったら、連れてきていいですよ、と言っていただいておりました。
タプナードのパスタも、本当に懐かしいです。
何を書きたいのかよくわからないコメントになりましたが、思い出を共有させていただき、ありがとうございました。
引き続き、ブログ、楽しみに拝見いたします。
onihei 様
初めまして。
コメント頂戴し、誠にありがとうございます。
素敵なエピソードを共有いただき、重ねてありがとうございます。
onihei様も定期的に通っていらしたとのこと、お話を拝聴する限りきっと一度はお会いしたことがあるのでは?と、他のお客さんの顔を思い浮かべていました。
初めて訃報に接した際、私も同じく絶句してしまいました。私は転勤やコロナ禍でここ2,3年は思うように訪問することができなかったのですが、最後にお会いしたのは2021年12月末でした。
近年は随分とスリムになられた印象がありましたが、ヨガやサーフィンをして体を絞っていると仰っていたので健康に気を付けていらっしゃるのだなと、特段気にも掛けていませんでした。
また、お子さんの成長を嬉しそうに話され、週休3日にして一緒にピアノの練習をしたり…とワークライフバランスを保ち、今が一番幸せなんだろうなぁと他人事ながらに嬉しくお話を拝聴していました。
それだけに今回は突然のことで、岸本さんの心中を察すると本当に胸が張り裂ける思いです。
onihei様から伺ったエピソードは改めてイイお話だなあと思いました。
私の書いた上記エピソードにも同様のくだりがありますが、開店当初、若き日の岸本さんであればお子様同伴は店の雰囲気を変えてしまうとして認めなかったのではないでしょうか。
しかし、10年の歳月を経て素の自分でいられる常連さん・お客さんに恵まれ、ある意味、対峙するような姿勢を取る必要もなくなり、自らも父親となられたことで心境に大きな変化があったのだと思います。
これからの円熟期のBecが見たかったです。
全力で駆け抜け早々60くらいで引退されて、余生は悠々自適に海岸で一日中海を見ながら読書に耽る岸本さんの姿を勝手に想像していたのに。
本当に寂しくなりました。
しかしこうして今、私が面識のなかったonihei様とBecバナシで盛り上がれるのは岸本さんのお蔭ですし、新たなご縁をつくってくれたのだと思います。
我々はBecをよく知る者として、Becのことを知らない人たちにも岸本さんというオモロイ人がいたことを語り継いでいくことが供養になると信じます。
また楽しいエピソードを共有いただけると嬉しいです。
長くなりましたが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
あ