おそらく5年ぶりだろうか、「Restaurant MONTÉE」のシェフ、滑浦高行さんと再会することができた。
MONTÉEは2006年10月、滑浦さんが南フランス・ニームでの修業を経て神戸・諏訪山にオープンしたフレンチレストランだった。「MONTÉE」とはフランス語で「上り坂」を意味し、店舗が諏訪山の坂道にあったことに由来するものだ。
初めて私が訪れたのはオープンからちょうど1ヶ月後のことで、東京のイノベーティブ・フュージョンに食べ疲れてきた頃だった。
そんなタイミングで口にした滑浦さんの料理は意外性に富みながらも、しっかり地に足ついた優しく力強いフレンチで、私の胃袋に染み渡った。
それ以降、私は東京から帰省するたびにMONTÉEに足を運ぶようになり、帰省時の一番の楽しみがMONTÉEでの食事だったと言っても過言ではない。
決して便利とは言えない立地条件にもかかわらず、私同様に、滑浦さんの料理を目当てに坂を上ってくるファンは着実に増えていったが、2014年12月、MONTÉEは惜しまれながらも閉店する。
閉店の理由は何とパリへの移転だった。
ほとんどのシェフが海外修業後に日本での独立を目指すなか、日本で独立し一定の地位を築いたシェフが再び海外に渡って独立を目指す例は聞いたことがなかったので大いに驚いたものだが、フレンチの本場で自分を試したいという想いを抑え切れなくなったとのこと、ストイックで志の高い滑浦さんならきっとやってくれると思った。
滑浦さんは閉店後程なくして渡仏し、それ以降はお会いすることがなかったのだが、今回伺うに色々な紆余曲折があったらしく、2016年9月、何とかパリでの再オープンに漕ぎ着けた。
そして1年半後の2018年3月、2019年ミシュランガイド・フランス版で見事一つ星に輝いたことは多くの方が知るところだろう。
今回パリを訪れることが決まって、ディナーの予約について問い合わせたところ、タイミングよくお邪魔できることに相成ったので、ご報告させていただく。
店はセーヌ川左岸に位置するパリ14区のひっそりした住宅街に佇んでいた。
店内は神戸時代のイメージをそのままにシックでエレガント。
神戸時代はなかったキャビネットには、ワインや食器、カトラリーが美しく配置。いやーステキ。