2008年以降、11年連続でミシュラン一つ星を獲得し続ける東京・西麻布の日本料理「ラ・ボンバンス」。
私は正統派日本料理が好みなので、あまりアレンジが効いたものには心惹かれない。
ただ、この店は別で、私が液体窒素やエスプーマが好きだった頃に「東京カレンダー」でよく目にしていて、その日本料理らしからぬ佇まいに大変興味があった。
数年にわたって何回か予約を試みるもタイミングが合わないまま未訪問になっていたが、今回タイミングよく滑り込むことができたのでレポートしたい。
階段を降り扉を開けると、まずこのディスプレイがお目見えする。
何とも外国人たちが大いに好奇心を駆り立てられそうなセンスをしている。
これまで気が付かなかったのだが、遊び慣れたオトナたちはもちろん、インバウンド受けする要素が満載の店である。
店内は和洋折衷のインテリアで、カウンター席と半個室のテーブル席から構成される。
今回はしっぽりできそうなテーブル席を選択。
席に着き気付いたのは、BGMが何とEXILEのATSUSHI。まぁこれもこの店ならアリなのか。
料理がスタートする前に大将の岡元信さんが自らテーブルを一つひとつ回り、挨拶をしてくれた。
岡元さんは新潟県の生まれで紀尾井町の老舗料亭「福田家」で腕を磨いた凄腕。
物腰柔らかい語り口で、現店舗への移転やディスプレイにまつわるエピソードについて時折冗談を交えながら語ってくれた。
いやー心をつかまれるよね。
そしてもうひとつ、心をつかまれるのがメニューリスト。
この店の名物とも言える演出のひとつで、数字や絵文字を駆使して料理名を暗号化してある。
特に恋人と「ああでもない、こうでもない」と一緒にメニューの解読作業を行えば二人の距離もグッと近くなる。
この暗号メニューは毎度お店の女性スタッフが頑張って考えているのだというが、お客を楽しませようとする姿勢が素晴らしい。
さて、料理のご紹介といこう。
まず、酒はナパのシャルドネをボトルで。
最初の一皿は「鰻蒲焼き蕪蒸し」。
うんまい。香ばしい鰻を包む雪のような蕪。銀杏の風味も木耳の食感も素晴らしい脇役。幸先良いスタート。
続いては「鮟肝ムースと刺身、鶏手羽パリパリ焼き、餅」。
続いて椀物。
「蟹真丈雲子すり流し」。
今度は和食らしからぬ佇まいの一皿。
「フォアグラトリュフ茶わん蒸し」。
「香箱蟹グラタンと蟹北京ダック」。
「鮮魚のタタキと春菊お浸し」。
「牛肉のサラダ」。
「フカヒレ鍋」。
これが今回のハイライト。和食というより中華のテイスト。深美味いスープがフカヒレに染み、最後の一滴まで有難く飲み干した。
「炊き立てご飯」。
「色々プレート」。
「味噌汁」。
デザートは「白いコーヒーと黒胡麻シャーベット」。
「苺とチョコムース」。
最後はコーヒーで締め。
正直、一皿一皿のクオリティについては振れ幅の大きさを感じてしまったのだが、バリエーションに富んだ数々の料理を愉しませていただき、大満足なディナータイムとなった。
岡元さんは料理の合間に折を見てはテーブル席を訪れ、料理や店のことについて語ってくれ、官能的な大人の雰囲気漂う店からは窺い知ることができない隠れた想いを聞くことができた。
スタッフの方々も丁寧な接客で、お客とのコミュニケーションを取ることに長けていた。
総じて、雰囲気、接客、演出等を合わせて考えると、一つ星は妥当な評価だと思う。
やはりお店は総合力だと再認識した夜だった。
昨年3月には京都・祇園に2号店がオープンしたので、こちらも是非一度訪れてみたい。