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私のソウルフード(2)

本日は前回の投稿でもうひとつあると申し上げた私のソウルフードをご紹介したいと思う。

店があるのは元町商店街の一本北の東西の通り。

店の名は「神戸元町別館牡丹園」。中華料理(広東料理)の店である。

1954(昭和29)年創業の大老舗だ。

以前はこの近くに同じ中華の「本館牡丹園」という店があったが(現在は閉店)、同店は「廣洲」という店が阪神大震災以降、屋号を変えて営業を始めたらしく実は全くの無関係だったとのこと。

かつて店の前にもその旨明記した注意喚起の看板が立てられていたが、確かに初訪問のお客であれば「本館と別館、どうせなら本館に行こう」という心理が働くもの。これが事実ならなかなか厄介なハナシである。

ちなみに別館から花隈方面に5分ほど歩いたところには「元町牡丹園」という店もあった(現在は閉店)。

つい10年ほど前まで神戸・元町に「牡丹園乱立問題」があったことを歴史的事実としてここに記しておきたい。

さて、私のソウルフードはというと、別館の「什錦炒麺」(¥1,200₋)、すなわち五目焼きそばである。

麺の硬さはソフトとハードの2種類あり、私は必ずハードを選ぶ。

五目焼きそばと言えば、麺の上にさまざまな具が入った中華餡がかかっているスタイルが一般的だが、この店では餡の上・横に別調理の具がトッピングされている。

五目焼きそば・正面撮り

このトッピング形式は以前、トアロードで営業していた1945(昭和20)年創業の大老舗「杏花村」(閉店)でも採用されていたもの。

五目焼きそば・斜め撮り

この焼きそばを私が愛してやまない理由は、このバリエーション豊富な具を駆使し「味変」しながら一皿でさまざまな味わいを堪能できるから。

本日は私の五目焼きそばの食べ方をご紹介したいと思う。

①まず最初に味わうのは中華餡。餡だけを食べてみる。

この餡、中華スープの味わいが淡白で全然甘くないのが特徴。野菜の具はキャベツ、レタスにホウレンソウ。

ホウレンソウが甘くてウマイ

以前はレタスが入っていなかったと記憶しており、レタスが入りだした頃に違和感を覚え、味が落ちたと思ったものだ。しかし、もうこの味に慣れてしまい、今出はレタスがイイ味を出していると思える自分がいる。

②次に肉・魚介の具も交えて麺と一緒に食べる。

肉の具は豚バラ。

豚バラ

野菜の量と比べると約5分の1、もしくはそれ以下の量か。餡はあくまで野菜が主役、豚バラはそこに脂・旨味をプラスするイイ脇役。以前は鶏レバーも入っていた気がするが、現在ではレギュラー落ち。

鶏レバーが消えレタスが加入したということは、より野菜が主役の餡にしたかったという店の意図が汲み取れる。今の餡はアッサリしていてアラフォーの私にはとても心地良く、肉系はこれぐらいの量がベストだと感じる。

魚介の具はイカ。

イカ

しっとりの要素にプリプリの歯応えをプラス。こちらも欠かせない。

同時並行して、③トッピングの具も味わってみる。

私は基本的に麺と併せて食べず、トッピング単体もしくは野菜餡だけで食べる。言わば、五目焼きそばの合間に別の料理を愉しむようなノリで、複数の料理を食べたようなお得感を味わっている。

これは果たして正しい食べ方なのか…と自分でも疑問に感じているが、色んな食べ方を試した結果、個人的にはこのスタイルがもっとも満足な食後感を得られるという結論に至った。

トッピングは、まず蒸し鶏。

蒸し鶏

淡白な味わい。骨付きで、軟骨部分まで楽しめる。

次に叉焼。

叉焼

こちらもさっぱりした味わいで甘くないのがイイ。蒸し鶏と叉焼は2切れずつあるので、前半戦は1切れずつで我慢。

そして半熟揚げ卵。

半熟揚げ卵

ご開帳すると味がまろやかに変化するが、この時点ではまだ開帳しない。

④全体量が以下のように約半分になれば味変を行っていく。いわば前半戦はハードの麺を愉しむための時間であったが、餡で麺がしなってしまった後半戦は異なる味でそのマイナス要素を挽回する作戦だ。

前半戦終了

ここで卓上の調味料が登場する。

卓上調味料

まずはカラシをサイドに足して…

カラシ投入

次に酢をたっぷりと全体に万遍なくかける。

酢ぶっかけ

ここでいよいよ半熟卵を開帳。

卵ご開帳

酸っぱさ、まろやかさと餡の旨味、カラシの辛味が皿の上で混然一体となり、若干スープ状の別料理ができあがる。

酢と卵で麺が一層しなるが、この状態になるとしなった麺の方がより美味く感じられると思っている。酢味で〆るため、胃袋も幾分さっぱりした食後感を得ることができる。

以上、長々と五目焼きそばの食べ方についてご紹介したが、この料理との最初の出会いはやはり「つるてん」のぶっかけそばを食べた1991(平成3)年頃だったと記憶している。

衝撃を受けた私はやがて高校生となり、土曜日の昼、ぶっかけそばとツープラトンでこの五目焼きそばを食べに友人と店を訪れるようになったが、高校生の舌にこの味を理解するのは少々酷だったのかもしれない、自信をもって連れて行ったにもかかわらず、友人から「味がしない」とか「麺が歯に詰まる」とか心ない一言をもらい大いにショックを受けたものだ。

印象的なのは1998(平成11)年の2月。店を訪れると、1階奥の円卓席に淡谷のり子風の初代のマダムがひとり陣取って当時設置されていたテレビで長野五輪のフィギュアスケートを見ていらっしゃった。私は友人と二人、横のテーブル席で五目焼きそばを食べながらもこそこそテレビに目を遣っていたら、マダムが「どうぞ見ていいわよ」と。一緒にミシェル・クワン(私と同い年)の演技を見た記憶がある。

あれから22年も経つのか、懐かしいものだ。

先程ご紹介した五目焼きそばの食べ方は私がその長い年月の間に編み出したもの。いつ辿り着いたのかは記憶にないが、後半戦における起死回生の調味料使用などは一人で思いつくはずもなく、おそらく両親や友人、周囲で食べていらしゃるお客の食べ方から学んだものだと考える。改めて感謝したい。

「神戸元町別館牡丹園」を訪れて五目焼きそばをオーダーしなかったことは一度もない。これからも自信をもって100%オーダーすると断言する。

それほどここの五目焼きそばを私は愛しているし、私にとってのソウルフードなのだ。

逆に他の料理の味を知らないままでイイのだろうかと思うこともよくあるが、とりあえずは良しとしよう。

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