次は言わずもがな、供されるドリンクを愉しもう。
いずれもこの空間に相応しい見事な完成度だが、なかでもオススメしたいのは、常時6種類ほど用意されている旬のフルーツカクテル。
最近、カクテルなどほとんど飲むことがない私だが、ここでは絶対にカクテルをオーダーする。
甘味、酸味、清涼感、食感など、各々のフルーツの特長を活かした逸品ばかりで、その表現方法は多岐にわたる。
ここで先日訪れた際に頂いたカクテルを紹介したい。
まずは「ピオーネのカクテル」。
スムージー状のカクテルの上に大きなピオーネが一粒。見た目のフォルムも彩りも美しい。
シンプルにウォッカベースで仕上げて、数滴単位で企業秘密の酒も含まれているという。
なるほど、ピオーネ本来の甘味と酸味を引き出した爽やかな一杯だ。
数滴単位で調整を施すところに吉成さんのこだわりが垣間見える。
次は「モモのカクテル」。
こちらもウォッカベースのフローズンカクテルで、企業秘密を数滴。
モモ本来の甘味に赤ワインの泡をあしらうことでキリリとした深みが加わり、より奥行きのある味わいに仕上がっている。
「何が入っているんですか」と尋ねると、真顔で「ノビチョクです」と応じる吉成さん。
やめてほしい。
そして「バナナのカクテル」。
手際良くカットしジューサーでとろりと仕上げたバナナジュースをブランデーで香り付けした、甘い一杯。
ラストに吉成さん自らスプレーボトルでもう一度ブランデーを吹きかけて仕上げる演出が何とも心にくい。
陶器のグラスに入れ漆器のスプーンで頂く和風スタイルは空間との調和を考えての供し方だろうか。うーん、どこまでも美意識が高い。
今回ご紹介したフルーツカクテルはほんの一部。
他にも、グレープフルーツ、マンゴー、イチゴにカキ、パッションフルーツ、シークワーサーなど、四季折々のフルーツが用意されている。
まずは本日のフルーツのラインナップを確認してからオーダーすることをお勧めしたい。
古くから港町として栄えた神戸のまちにはあまたのバーが存在するが、これほどまでに店主の高い美意識が具現化されたバーはなかなかないと思う。
三ノ宮で酔い明かすのも楽しいが、たまには山手幹線を越えて坂を登ってもらいたい。
一流のこだわりに触れて、また違った酔い方をしていただけることだろう。