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神戸・老舗バーテンダーの言葉に色々考えさせられた

ふと本棚から京阪神エリアの情報誌「Meets Regional」の1991年6月号を取り出してみた。

1991年と言えば、日本はまだバブル全盛期で世の中誰もが浮き足立っていた。神戸もまだ阪神淡路大震災の被害を受ける前、港の活力でまちは潤っていた。

そんな時代に組まれた神戸のバー特集を読み、色々と考えさせられてしまった。

タイトルは「コンサバティブ神戸」といって、老舗バーの紹介とともに各店主のコメントが掲載されているもの。

紹介されているバーは以下の7店。

ルル(1949年創業) 
アカデミー(1922年創業) 
スモーキー(1956年創業) 
でっさん(1946年創業) 
YANAGASE(1966年創業)
ABUはち(1954年創業)
ローハイド(1960年創業)

半分ほどがすでに閉店しているが、いずれも往時の神戸を彩った名店ばかりである。店主たちは長いバーテンダー経験のなかで自分なりの哲学を培い、インタビューで切れ味鋭く含蓄あるコメントを残している。それを読み、色々と考えてしまったワケだ。

その一部をご紹介したい。

ルル店主・長原良明氏「常連だと思っている常連客は好きじゃない」

ABUはち店主・畑中邦夫氏「ここを気に入ってくれる人なら客は選ばない」

確かにバーでは客も店の大切な構成要素になる。店にとって厄介なのは「バーの通」を気取った客だろう。自分はそういうやな客になってないか。もしお気に入りの店が万人ウェルカムの姿勢なら、そこは節度をもって良い客でいたいと思う。

アカデミー店主・杉本紀夫氏「そんな時代なんでしょう」

最近は酒を味わうのではなく、ムードを味わっている客が増えてきたという話にさらりと返した一言。もしも今、スコッチの写真を何十枚も撮る私の姿を杉本氏が見たら何を思うだろう。「自分はムードすら味わえていないのかもしれない」…ふとそう思った。

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7 Comments

  1. M.Kug M.Kug

    いつも大変楽しく拝見させていただいております。YANAGASEは好きでよく通いました。YANAGASEの前マスターの言葉も気になります(機会があれば教えてください)。代替わりしたマスターもたまにしかこない私のことをよく覚えてくれていて、私の好みに合わせてカクテルを作ってくださいます(コロナ禍でしばらく伺えてません)。他にも神戸には好きなバーはありますが、このような記事は本当に楽しく、嬉しいですね!

    • mickeater mickeater

      M.kug様
      嬉しいコメントを頂戴し、誠にありがとうございます。
      YANAGASE、よく通われているのですね。私も好きなオーセンティックバーのひとつです(M.kug様のように好みを覚えられるほどのキャリアはありません)。先代マスターの中泉さんの言葉かは不明ですが、記事には『「時流に乗らず逆らわず」というスタンス』と記されていました。まさにその言葉を体現したかような店だと思っています。現マスターも先代のエスプリをきちんと引き継がれているようですし、コロナが落ち着いたら久しぶりに訪れてみたいです。
      とりわけ活気があった頃の神戸の良さを先輩世代に懐かしんでいただきたい、若い世代の方たちに伝えたいと思いながら、文章を書いています。神戸、他のまちにはなかった往時の雰囲気を取り戻してもらいたいものです。
      またおすすめのバーなどあれば是非、ご教示いただければと思います。
      どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

  2. 初めてコメントさせていただきます。
    とても懐かしい思いで拝読いたしました。ルル、アカデミー、YANAGASE、ローハイド、デッサン、神戸ハイボール、よく通いました。なかでもルルのマスターの、
    氷をまん丸く削っていくときの美しい所作は忘れられません。(阪神淡路大震災で力尽きてしまわれたとのことで残念でなりません)。YANAGASEの暖炉で焼いた焼き芋の味も含めて、いずれも古き良き神戸です。

    • mickeater mickeater

      mituki様
      コメントを頂戴し、誠にありがとうございます。
      ほとんどのバーによく通われていたとのこと、羨ましい限りです。
      私自身、YANAGASEの中泉さん以外は実際にお目にかかったことがない方たちなので、こうしてルルの長原さんの大変貴重なお話をうかがうことができて深く御礼申し上げます。
      しかもYANAGASEで焼き芋が頂けたのですか。これまた味わい深いお話で、当時の常連さんたちが愉しまれていたようすを妄想してしまいます。
      いま私が特に後悔しているのは、アカデミーにうかがえなかったことです。お酒を嗜むようになった頃にはルルはすでに閉店していましたが、アカデミーはよく近くを通っていました。
      気になっていながら一度もうかがうことはなく、ただただ閉店・店舗解体の様子を見送ってしまった苦い経験があります。
      YANAGASEやローハイドのように後継者に引き継がれるバーはごくごく稀で、店主の引退とともに姿を消してしまうバーがほとんどだと思います。
      まさにこの時代の素晴らしいお店を自分の脳裏に焼き付けていきたいと思っています。
      また色々、ご教示いただけますと幸いです。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

  3. 匿名 匿名

    私がお蕎麦屋さんになれたのは
    中泉マスターのお陰です☺️

    • 匿名 匿名

      T様
      コメントを頂戴し、誠にありがとうございます。
      皆さん色んなところで繋がっていていることが今のまちの賑わいを生み出していると考えるととても感慨深いです。
      今度そのお話、詳しく教えてくださいませ!

  4. […] 3月に昔の神戸のバーについて書いてからというもの、他にどんな店があったのだろうかと気になって色々と調べてみた。 […]

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