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老舗に歴史あり

老舗にお邪魔すると、おのずとその店の歴史について訊ねたくなる。

古いグルメ雑誌等を紐解けば詳しいことが記されている例もあるが、時を経ると、大体は「○○年創業の老舗洋食店」とか「創業以来△△年にわたって受け継がれてきたタレは…」といったごくごく簡素な表現に集約されてしまって、さらに詳しく知りたいと思った頃には閉店や代替わりでなすすべなしということが往々にしてある。

リアルタイムでお邪魔できている老舗については、普段はあまり日の目を見ない店の歴史やエピソードなどを直接、店主やマダムから訊いてご紹介できればと思う。記事を読んで、少しでもその店に興味・関心を持ってもらえれば本望である。

今回、神戸・加納町の老舗イタリアン「リストランテ ドンナロイヤ」(以下、「ドンナロイヤ」)にお邪魔した折、マダムの渡邊勝子さんから創業時のようすがよく分かる貴重な写真を見せてもらったので、共有したい。

その前にドンナロイヤの予習だが、1952(昭和27)年にイタリア人のジュゼッペ・ドンナロイヤ氏が神戸元町・旧居留地で創業した神戸最古のイタリア料理店であり、現在はジュゼッペ氏の跡を継いだ2代目・渡邊元則さんが83歳にしていまだ現役で腕をふるっている(以前の記事はこちら)。

今回紹介する写真には意外な人物も登場するので、是非、想像力を膨らませて、昔のようすを楽しんでいただければと思う。

まずはこちらがジュゼッペ氏の写真だ。

人懐っこい笑顔が見られる。表情豊かな方だったのだろうか。

こちらの写真はフライヤーやWebでも使用されているもの。ネクタイ姿でパスタをチェックする眼差しは真剣そのもの。

おそらく一番左の黒いスーツがジュゼッペ氏だが、それほど背は高くなかったことが窺える。

旧居留地にあった店舗の外観。

「JOE’S」の看板が目印という記述があったが、まさにそれに当てはまる。おそらくジュゼッペの愛称が「ジョー」であることに由来するものだろう。にしても、「イタリヤ食堂」とは、何ともハイカラな表記である。

従業員の集合写真も興味深い。

勝子さんによると、かつてのドンナロイヤは「女の園」だったらしい。さすがにその当時のことは直接知らないというが。

なかなかの美人さんぞろいだが、皆さんご存命であれば80歳超えは確定かと思われる。

お客の写真もチラホラ。旧居留地という土地柄、外国人の社交場だったという記述が残っているが、当時の写真からもそのようすが窺える。

これは店内ではないと思われる。オフ会かな。どこだろう。ハリウッドスターのような人たちがズラリ。奥には東洋人と思しき人の姿も。

さらには着物を着た日本人の姿も。奥のバーカウンターは加納町の店舗でも忠実に再現されている。

「K.Tamura」さんと「N.Matsumoto」さん。有名な方なのか。少なくとも私の乏しい知識では誰か特定できなかった。

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2 Comments

  1. M.Kug M.Kug

    いつも素敵な記事をありがとうございます。今回のドンナロイヤの記事も大変楽しく読ませていただきました。長い歴史の中のほんの一部分のカットではありましたが、それでもきっと間違いなく暖かい歴史のつながりなのだろうと、あなたの文章に私も少し優しい想いになりながら、想像を巡らせていました。レストランといえば、かつてはその街を彩る存在の一つであったはずです。最近は「最先端」という名の下にそのような存在を見つけることは難しくなってきました。「最先端」は流行とか斬新とかいう衣装に包まれ我々を惑わせます。しかし本質はきっと別にあるはずです。良いレストランはきっと恋愛と同じように、その店、そのシェフやマダムをもっと知りたくなりますよね! 子供に戻ったように胸を躍らせながらレストランのドアを開けるあの気持ち、、、。良いレストランないしシェフはただ美味しい食事を提供するだけではなく、顧客の人生に少しだけ違った物語を付与してくれる存在だったはずです。大切なのは「最先端」ではなく、伴侶と同じように「生涯愛せるかどうか」のはずです。美食とは本来そういうもののはずで、時に残酷ではあるけれでも極めて唯美的で、泡沫の、でも永遠の、、、矛盾と逆説的の中に存在するものと思っています。

  2. mickeater mickeater

    M.Kug様
    コメント、誠にありがとうございます。
    拝読し、レストランとはまさにそういう場所だったなぁと、忘れかけていた感覚を取り戻したような気分になりました。
    昔は今ほど店も多様ではなかったですし、ひと家族に1,2軒、お決まりの安息の場所があったような気がします。そこには常連も一見も分け隔てなく、美味しい料理と穏やかなサービスを提供してくれるシェフと給仕係が常にいたような気もします。そして誕生日や卒業など、人生のハレの日を彩ってくれるとても大切な存在でした。
    しかし時が経ち、いつの間にか、一度しか訪れたことのない店をグルメサイトで酷評する心ない客、そして写真映えだけを狙った心のない料理をつくる店がごまんと溢れる世の中になってしまいました。
    そう考えると何とも悲しくなりました。
    ただ、そんななか、いまでも残る老舗には生涯愛してくれる客がいて、時代に流されず本質を守り続ける直向きさがあると思います。私自身、「最先端」や「話題の〇〇」に惑わされることも少なくありませんが、古き良き食の原風景を思い浮かべながら、あまり話題に上らない老舗の良さを少しでも多くの若い方に伝えることができればと思います。
    M.Kug様の素敵な想い出のなかにあるお店、機会があれば教えてくださいませ。

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