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その後、中西さんは四谷「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三シェフの新規レストラン立ち上げに携わったり、ザ・キャピトルホテル東急のダイニング「ORIGAMI」にも勤務していたという。
「ORIGAMI」名物のパーコー麺を裏の厨房で中西さんが作っていたなんて、誰が想像できただろう。
「(ORIGAMI時代の)サラリーマン生活は収入が安定しているうえ決まった休みも確保されているので良い気分転換になった」と中西さんは回想する。
私のようなどっぷりサラリーマン人間が中西さんの立場なら、「このままORIGAMIで60歳まで、いや再雇用も入れたら70歳くらいまで働けるかな」とか妄想・皮算用に走るのだが、これまで全速力で駆け抜けてきた中西さんにはさぞや物足りない日々だったに違いない。
このリフレッシュ期間が一旦閉めた自分の店についてもう一度ゆっくりと考え直す機会となり、5年の歳月を経て、中西さんは店を再開する決断に至ったのである。
店名は以前と同じ「スクレ・サレ」。
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変わらず三人の想いが宿っている証だ。
そして、ソムリエ兼サービスには菜摘子さんが立つ。
店内はテーブル席のみの荒木町時代とは異なり、カウンター席がメイン。
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私のような「孤独のグルメ」系男子には非常にありがたいし、実際そういう男子(おじさん)が結構座っている。
料理はアラカルトが基本。ただし、5名以上の場合はシェフおまかせのコース料理となる。
木のぬくもりが温かい店内で食べたいものを気ままにオーダーし二人の楽しい掛け合いを肴にワインを頂いていると、まるでここは中西さんちの食卓かと錯覚してしまう。
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さて、ここで中西さん渾身の料理の数々を紹介しよう。
「田舎風お肉のテリーヌ」。
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これは必ず最初にオーダーする一皿。何という絵画的な美しさ。柔らかすぎず固すぎず、アッサリすぎず脂っこすぎず、絶妙の配合。ガルニの野菜マリネがイイ引き立て役で、ワインが進む。
「サーモンマリネの皮カリ焼き」。
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パテもそうだが、ポーションの大きさにシェフの心意気を感じる。カリカリの皮、身と皮の間の若干火が通った身、そしてフレッシュな身と重層的に美味しさが広がる。キャビアが効いたサワークリームも相性抜群。
「サーモンと帆立貝のタルタル」。
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私の中では皮カリ焼きのライバル。こういう料理を頂くと、クラシックな王道フレンチはやっぱりイイなぁと思う。サワークリームの下にしのばせられた上質なタルタルはねっとり口の中でまとわりつくような食感で丁寧な仕事が窺える。うーん、やっぱりワインが進む。
「ツブ貝のクリーム煮パイ包み焼き」。
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こちらは冬限定のメニュー。
私が人生で一番最初に頂いたフレンチのコースにパイ包み焼きが含まれていた。その美味しさに感動し、以来、パイ包み焼きには目がないのだ。
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大きく切られたツブ貝はまさに旨味の宝庫。歯応えも愉しめる。甘く煮込まれたタマネギ、まろやかなクリーム、さっくりしっとりのパイ皮…すべて一緒に口いっぱい頬張りたい。
「フォアグラと目玉焼き ルイ・オリヴェ」。
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こちらも冬限定のメニュー。フレッシュなフォアグラ、半熟の黄身、贅沢に散りばめられた黒トリュフ、マデラソース…これもすべて一緒に頬張るのが鉄則だろう。実に深く旨くまろやか、まさに傑作料理。赤ワイン片手に最後はソースをパンに染み込ませて完食。
「塩づけ豚バラ肉のカリカリ焼き」。
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豚の塩気がワインのペースを一気に加速させる。身は表面がカリカリなのに中身はホロっと崩れる柔らかさ。脂のしつこさを全く感じない。ガルニにはカリカリとは対照的なホクホクの煮込み豆。うーん、旨い。塩気に加え、バルサミコの酸味とクリームソースのまろやかさもアクセントになっており、実はかなりの技術が凝縮されているのではと推察する。
「骨付き仔羊肉のロースト」。
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何というポーションの大きさだろう。これで3,000円そこそことは値付けを誤ったのではないか。上質なミディアムレアの仔羊は実に柔らく、肉汁の旨味を堪能できる。また、重厚なフォン・ド・ヴォーの味わいにフレンチの奥深さを改めて認識させられる。
「ヌガーグラッセ」(デセール)。
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「いっつも一緒やん」と突っ込まれるのだが、だって好きなんやもん。ドライフルーツとナッツがふんだんに練りこまれていて食感が愉しめる。甘さ控えめなのも嬉しい。この後、ハーブティーを頂いて締めるのが私のコース構成だ。
[…] 以前にも紹介した、中西貞人さんと菜摘子さんが営むビストロだ。 […]