パリ3区から4区にかけて、数々の歴史的建造物が建ち並ぶマレ地区という場所がある。
かつての独裁者ロペスピエールや小説家ヴィクトル・ユーゴーの生誕の地としても知られるが、現在ではLGBTや中国人のコミュニティの中心地となり、ファッションの流行発信地であったりもする。
そのマレ地区のレピュブリック広場から脇道に逸れた裏通りにひっそりと佇むレストランでディナーを愉しんだ。
「プラミル」は前職が物理教師だったというプラミル氏が2006年にオープンした人気のレストランだ。
訪問当日もディナーのテーブル席は間隔が30cmもなく、先客たちがひしめき合いながらディナーを愉しんでいた。
人気の理由だが、料理の美味さはさることながらコストパフォーマンスが抜群に良い。
前菜、メイン、デセールの3皿プリフィックススタイルの本格料理が33€という驚きの安さである。
サービスは英語対応が可能で、とりあえずビオの白が飲みたいとお願いしてみる。
ワインリストを持ってきてもらい、リーズナブルなMacon Villagesをセレクト。
やはり日本の好きなお店でもよく供されているだけあって、ライトな辛さが馴染み深く美味かった。
さて、前菜はシェフのスペシャリテのひとつという、エビ、トマト、アイスプラントのサラダ。
主役はアイスプラント。一度にこんなに沢山の量を頂いたことはなかったのだが、クセがないうえ非常に瑞々しく歯応えが愉しめた。セミドライのトマトが甘くて滋味深く、秀逸なアクセントに。
全粒粉が芳るパンでメインを待つ。
前菜を魚介類にしたので、メインは肉をセレクトしたく、リードヴォーのフリカッセにしてみた(+5€)。
これでもかというほどのボリュームのリードヴォーが本場の豪快さを感じさせる。日本でもお馴染みの芽ネギとカブが合わせられているところが面白い。甘くシャキシャキしたカブで全体が優しい味わいに。
デセールはラズベリーのタルト。
ごくごくありきたりのタルトなのかと思いきや、ラズベリーとパイの間に何やら挟まれているではないか。正体はリンゴと、何とピーマンだった。特にピーマンの存在がタルト全体の味わいを随分とライトにしていて、膨満感に苛まれることなく完食と相成った。
いやー実によく計算されている。
最後はカフェ・オ・レで一服。
総じて、正統派のフレンチに間違いないが、食材の組み合わせ方が実に面白い料理で、大変愉しませてもらった。
そして、固定観念にとらわれることなく自分の道を切り拓いてきたシェフの真骨頂を垣間見た気がした。
機会があれば是非、直接話をうかがってみたい。
それまでにフランス語が何とかできればの話だが…。