…というわけで、ここまでは店のあゆみと料理のことを中心につらつらと書いてきた。
ここで締めてもイイのだが、今回はもうひとつ伝えたいことがある。
それは花谷さんの飲食業界に対する熱い想いである。
少し大きな話になるが、これまで料理人という職業は1日の労働時間が明確に規定されているわけでもなければ、店によっては休暇すらほとんどない、いわばブラックな働き方を強いられてきた。
しかしながら近年、世間に「働き方改革」ということばが浸透し、企業も社員の労務管理に対してこれまで以上に注意を払うことが求められるようになってきた。
その流れは飲食業界にも波及しつつあり、先のTBS日曜ドラマ「グランメゾン東京」でも、育児のために短時間勤務を選択するレストランの料理人の姿が描かれていた。
実は花谷さん、ずっと前から飲食業界のブラックな働き方に疑問を持ち続けており、悪しき慣習を変えるべく、自分の店で日々改革を実践している。
すなわち、それが店舗の拡大(一定数の従業員を確保することでシフト体制で店を回し、一人ひとりの週休を確保する)であったり、ランチ営業の終了(ディナーのみの営業にすることで、スタッフの拘束時間を短くする)であったりするわけだ。
これらは決して自己の利益優先ではなく、業界全体の未来を俯瞰した上での英断であったことに改めて敬意を表したい。
そして、将来、飲食業界全体の労働環境が改善され、いずれは大学生が就活のエントリー先に飲食店の名前が挙がるような世の中になってほしいと花谷さんは言う。
確かにそんな時代が到来すれば、これまでなかった新しい発想が生まれてきそうだし、飲食業界全体の発展にも繋がるだろう。
そのためにもハナタニには引き続き旗振り役となって、神戸いや全国の飲食業界を牽引していってもらいたい。
今後も引き続き微力ながら応援したいと思うし、花谷さんの挑戦からますます目が離せなくなってきた。