前回の投稿で神戸・ハンター坂のイタリア料理店「ハナタニ」について書いたが、今朝、偶然にもハンター坂に関するセンセーショナルなニュースが飛び込んできた。
注釈、「センセーショナル」とは言っても、私のようなマニアしか驚かない記事だとは思うが。
以下、神戸新聞の記事URLである。
「ハンター坂」という地名は明治期に神戸で活躍したイギリス人実業家、E.H.ハンター氏の邸宅がかつてこの坂あったことに由来している。
このハンター氏、なんと日立造船の創業者であり、日本で初めて障害保険を導入した人物として知られている。
これだけ著名な人物ながら顔写真や私生活に触れる文献はあまり世に出回っていないような気がする。
消費者の視線をハンター坂に向けるという意味でも、こういった話題のニュースは地域活性化に有効だと思っている。
さて、ご存知のとおり、神戸には「ハンター坂」のほかにもカタカナ文字の地名が結構ある。
皆さん、何となくは気付いていらっしゃると思うが、これらの地名は明治の神戸港開港による外国文化等の伝播に由来していることが多い。
今日はその辺を少し深掘りしてみたいと思う。
例えば、「メリケンパーク」という地名。
「メリケン」とは、”American”の発音を当時の日本人が「メリケン」とヒアリングしたことに由来する。
明治時代、メリケンパークの付近にはアメリカ領事館があり、その近くの波止場ということで「メリケン波止場」と呼ばれるようになったのが端緒である。
おそらく英検やTOEICを受けまくっている現代人がヒアリングしていたら、きっとメリケンパークという名前にはなっていないだろう。
続いて、「トアロード」。
これは明治時代、この道の北限にドイツ系資本の「トアホテル(Tor Hotel)」という高級ホテルがあり、そのトアホテルに通じる道ということで「トアロード」と名付けられたものだ。
だが、そもそもの「トアホテル」の「トア」の意味についてはおもに三つの説がある。
ひとつは日本語説。
すなわち、トアホテルが日本人向けに「東亜ホテル」という名称を使っていて、それが「トウア」→「トーア」→「トア」に変化したという説だ。
もうひとつはドイツ語説。
「Tor」とはドイツ語で「門」を意味するのだが、神戸港開港により世界に門戸を開いた神戸にあるホテルということでそう名付けられたとする説だ。
そして、最後のひとつは英語説。
「Tor」とは英語で「岩山」を意味する。すなわち六甲山系の山並みを岩山と見立てて、その麓にあるホテルということでトアホテルとなったというわけだ。
確かに明治時代の六甲山系は薪炭材確保のため森林が伐採し尽くされ、岩肌が見えるハゲ山となっていたので、「岩山」という表現には合点がいく。
正直、どれが真実かは今となっては分からない。しかし、トアロードの麓にかつて大きな外資系ホテルがあったと想像するだけでなんともロマンチックな話ではないか。
ちなみにこのトアホテル、かなりの大型高級ホテルで、宿泊部屋一室一室で色が異なり、当時としてはかなりモダンな、それは魅力的なホテルだったというが、残念ながら1950(昭和25)年に火事で焼失してしまった。
ちなみに現在、トアロードには「レストラン アッシュ」、「イグレック」で名高い山口浩シェフが営む神戸北野ホテルという高級ホテルがあるが、こちらのホテルはトアホテルをイメージしたものだという。
そのほか、山(六甲山)の方に目を向けると、まだまだ沢山のカタカナ地名が出てくるが、その話はまたの機会にしたい。
しかし、こうして見ると、やはり神戸は明治開港時の異国情緒が色濃く残るまちだということが分かる。
是非、地名の意味を頭に置いて、色んな想像をされながらまち歩き・食べ歩きをしていただきたい。いつもと少し違った愉しみ方ができると思う。
もはやグルメブログの体を成していないが、長文・駄文をご一読いただきましてありがとうございました。