大阪は阪急・豊中駅に程近い大きなスクランブル交差点から一本裏手に入ったところに、飲食店や美容院が建ち並ぶわずか30メートルあまりの渋い通りがある。
そこに2019年3月、仲間入りを果たしたのが「カフェ・アストーレ」(以下、アストーレ)だ。
アストーレを知ったのは、この近くでイタリア料理店を営む「ポルダブル」の福田さんから美味いコーヒーを淹れる店があると聞いたからだ。
店は大きなガラス窓とそこからのぞく黄金色の真鍮板をあしらったエスプレッソマシーンが目印。
元はスナックだったという店舗は内外装を一から造りかえ、木の温もりを感じる深緑とオフホワイトを基調としたエレガントな空間に生まれ変わった。
店主はSCAの認定バリスタ資格をもつ岡本高明さん。大阪・島本町の出身で今年32歳という若さだ。
岡本さんが店をもつに至ったエピソードがなかなか面白いので、紹介したい。
高校時代、地元のカフェで受験勉強をしていたという岡本さん。そこで飲んだエスプレッソの美味しさに魅了され、イタリアのカフェ文化に強い関心を抱くようになったという。そして、単にエスプレッソが好きという想いだけに留まらず、将来は自分で店を営みエスプレッソの美味しさを多くの人に知ってほしいと考えるようになった。複数のカフェ・喫茶店でアルバイトを経験し大学卒業後は北浜と北新地にある人気のイタリア料理店に就職。約2年間働いたのち、本場への熱い想いが抑えきれなくなりイタリアへと渡った。
イタリアでは、ナポリのカフェバールを皮切りに、フィレンツェの「Chiaroscuro(キアロスクーロ)」、「Ditta Artigianale(ディッタ・アルティジャナーレ)」といった名だたる名店で修業を積んだ。特にディッタ・アルティジャナーレでは、岡本さんの作ったエスプレッソがイタリアのバリスタチャンピオンだったヘッドバリスタをして”Buonissimo(ウマイッ)!”と唸らせ、1時間に4杯もお代わりさせたのだという。
もうこの時点で何かを掴んだと確信したのだろう、岡本さんは3年半の修業を終え帰国、現店舗を開店するに至ったというわけだ。