それでは、アストーレのオススメをいくつか紹介しよう。
まずはカフェメニュー。
やはりバリスタチャンピオンを唸らせた例の「エスプレッソ」から。
豆は岡本さんが最も信頼を寄せる大阪と芦屋のロースターから仕入れたもの。コク深さと酸味・甘味の完璧なバランスで余韻がとりわけ長く感じられる。砂糖は少量にして豆の持ち味を愉しみたい。
「カプチーノ」。
コク深い豆本来の味をミルクの甘さが優しく包み、円やかな旨味が生まれる。口当たりが良く、ドルチェとも相性抜群。
またこの店ならでは、岡本さんがイタリア修業でマスターしてきた特別な一杯を愉しむのもオツだ。
「ビチェリン」はトリノの老舗「Caffe Al Bicerin(カフェ アル・ビチェリン)」で生み出され、その名を冠した名物ドリンクだ。
エスプレッソにまちの代名詞とも言えるチョコレートと生クリームが合わせられており、大変飲みやすい。私はトリノ「カファレル」のチョコレートをお茶請けにコーヒーを頂くのが好きだが、このマッチングをカップ一杯のなかで表現しようとした人は天才だと思う。
「カフェアッラノッチョーラ」。
G7サミットの開催とナポリ歴史地区の世界遺産登録を記念して作られたという、ナポリを代表するドリンク。濃厚なヘーゼルナッツの甘味が前面に出てくる一方で、エスプレッソの酸味が後を引き、重層的な味わいが愉しめる一杯だ。ビチェリンよりもパンチが効いていて好みは別れると思うが、他にはない味わい。是非一度はチャレンジしてもらいたい。
「カフェレッチェーゼ」。
夏の盛りに頂いた一杯。南部プーリア州のレッチェというまちで愛される伝統的なアイスコーヒーだ。氷とアーモンドミルクが入ったグラスに熱々のエスプレッソを注いで作られる一杯は独特の甘い香りが特長だ。夏バテした身体に元気が湧いてきた。
ドルチェメニューでは、断然「ティラミスアストーレ」がオススメ。
エスプレッソをたっぷりと染み込ませたビスケットに生クリームと卵、マスカルポーネの酸味や円やかさが幾重にも重なる。時折のぞくココアのクランブルのサクッとした舌触りも心憎い。砂糖はほとんど使わず、エスプレッソ本来の爽やかな風味を食べて感じられる一皿だ。
最後は、アルコールメニュー。
本場にとことんこだわり、イタリアのビールやカクテル、アテが用意されている。
仕事帰りに、イタリア産のビールに生ハムなんて、なかなか贅沢な時間ではないか。
カクテルでとりわけ美味しかったのは、「エスプレッソネグローニ」。
カンパリをドライジンとスウィートベルモットで割ったイタリアの伝統的なカクテル「ネグローニ」にエスプレッソを合わせた一杯。
華やかな香りの下地にはエスプレッソの酸味がしっかり根を張り、ここでもエスプレッソの底力を感じずにはいられない。