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スパイスの奥深さを味わったランチタイム

神戸・岡本にスパイスの奥深さを堪能できる老舗レストランがある。

「スパイスレストランぶはら」。

スパイスの卸売業を営んでいた松山道夫氏が1976年に創業したシルクロード各国の料理が愉しめる店だ。

前の店は北野異人館街のなかにあり、まちの異国情緒ある雰囲気によく馴染んでいたが、1995年の阪神淡路大震災を機に元町の大丸界隈に、そしてその後は現在の岡本に移り営業を続けている。

以前にもお話ししたとおり、私は体質的に辛いものが苦手だが、ここの料理はただただ辛いワケではなく、スパイスの香りが重層的に感じられる何とも奥深い味わいが愉しめるとあって、岡本に行く機会があれば必ずリストアップする店のひとつだ。

今回はランチタイムにお邪魔し、前菜・サラダにカレーと食後のドリンクが付くコースをオーダーした。

まず、前菜は「チキンサモサ」と「野菜サモサ」。

軽やかに揚がっていて色んなスパイスの風味を感じる。ウマイ。

お好みで付けて頂くトマトとコリアンダー、2種類のソースもオツ。

付け合わせのハーブにはディル。サモサにディルなんて勉強になった。

サラダは「中東ナスのサラダ」。 

ナスは中東の人々にとってかなり親しみ深い食材。中東ナスは日本のナスよりも味が濃いような気がする。ナスの瑞々しさが際立ち、酸味のあるドレッシングとケッパーがこれまたよく合っている。

カレーは「ラムカレー」と「ジンガカレー」をセレクト。銅鍋でグツグツ煮込まれた状態で供される。

ラムカレーのラム肉は柔らかくトロトロの状態。

中のひよこ豆が良いアクセントだ。数種類の煎り立てスパイスが香りに重層感を持たせ、熟したトマトの酸味が味に深みと爽快感を加える。

ジンガカレーとはエビのカレー。

ミルクで煮込まれたクリーミーでマイルドなカレーだが、スパイスの余韻がかなり長く続く。細かく刻んで炒めたタマネギの甘味がより深い味わいを演出、シメジの歯応えも愉しい。

食後のドリンクは「スパイスチャイ」。

シナモンが香り高い。粉砂糖のほかに氷砂糖が用意されているのがユニーク。氷砂糖はゆっくり溶けるため、食後の談笑も自然と長くなる。

スパイスの余韻でまだ汗が止まらないなか、店内をじっくり見渡してみた。

スパイスの香りで満たされた空間で中東の調度品に囲まれていると、ここは神戸ではないかのような錯覚に陥ってしまう。

昔、トアロードに「金宝酒家」という中華料理のお店があり、子どもの頃、親に連れて行ってもらったことがある。

扉を開くと外界とはまるで異なる薄暗い橙色の怪しい世界、サービス精神旺盛で香港語と関西弁を巧みに操る店主、雑然と配されたエミール・ガレのランプや古い蓄音機などの高価なアンティークに衝撃を受けた記憶があるが、同時に香港のまちや歴史・文化への好奇心を大いにそそられたものだ。

ぶはらも金宝酒家のような怪しさこそないものの、中東への憧れや妄想を膨らませてくれる唯一無二の店だと思う。

現在は2代目が頑張っておられるが、後進は育っているのかが唯一気掛かりだ。この世界観を絶やさないでほしいと切に願う。

2 Comments

  1. のん のん

    金宝酒家、なつかしいです!! 青二才だったので、調度品の良さがわからずじまい。怪しいお店になんだか胡散臭い店主さん、でもおいしくてサービス満点で、だんだん楽しい馴染みのお店になりました。

    • のん 様
      コメントいただき、ありがとうございます。
      馴染みのお店だったとのこと、大変羨ましい限りです。
      もし何か面白いエピソードがあればまた教えていただきたく存じます。
      のん様が青二才でしたらきっと私は青一才か青0才だったと思います…笑。
      金宝酒家の調度品は店主のキャラクターと相まって、当時は不気味にすら思えました。
      しかし、あれほどの個性は今でも強烈に印象に残っています。
      金宝酒家のようなお店は今はなくなりました。
      SNS全盛の現在においては、もしかすると再評価されていたのかもしれません。
      改めてウェスリーさんのご冥福をお祈りいたします。
      そして、今後ともよろしくお願いいたします!

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