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愛すべきお店がまたひとつ増えた日

今日は神戸で野暮用があったのだが、明日は朝早くから仕事があることもあり、神戸に滞在できるのはせいぜい1時間半というタイトスケジュールだった。

三ノ宮で用を済ませ、残りは30分余りとなったのだが、どうしても緊急事態宣言解除後の初外食の欲求が抑えられなくなった。三宮で駅近、サクッと頂くことができる神戸ならではの店を…と考えたところ、この店が真っ先に思い浮かんだのだった。

「欧風料理もん」。1936年創業、80年以上の歴史を誇る老舗洋食店である。

実は先日、別の老舗洋食店について書いたところ、いつも示唆に富んだコメントを下さるB様からこの店をオススメいただいたのである。

お恥ずかしながら私は神戸を代表するこの店を一度も訪れたことがなく、これまで偉そうに神戸の洋食についてツラツラと語ってきた。

そういう意味では、今日はもんに対して、初めましての期待感と今まですみませんというお詫びの気持ちが交錯していた。

さて、重厚な木の扉を開くと、ロッジのような天井が高く木目調のシックな空間が広がった。

すぐ外の繁華街の喧騒とはまるで別世界の様相、女子二人連れが静かに食事を愉しんでいる。

BGMは聴こえるか聴こえないかの音量で何かがかかっているように思えたのだが、今考えるとあれは店外の音だったのかもしれない。

案内されたカウンター席には肘置きがあり、北野の老舗バー「ヤナガセ」のカウンターが想起された。

早速メニューを見ると、一番左上に「名物トンカツ」。これは単品か?と思ったので、その下の「トンカツ定食」を注文。

注文して約5分くらいだろうか、歴史ある店の隅々まで目をやりながら、悠久の歴史を妄想する。横にはテイクアウト用のビフカツサンドが。ビフカツを頼むべきだったか?と迷いが生じ始めた矢先に早々とトンカツが供された。

想像していたフォルムとはまるで違うトンカツに思わず感嘆した。

ヒレカツがしっかり5切れ、別々に揚げられている。

付け合わせには茹でたキャベツ、インゲン豆、ニンジンにモヤシ。

味噌汁にライス。ライスはお代わり自由。分厚いたくあんと野沢菜が付くのも心憎い。

まずはカツをひと切れ、何もかけずに口に含んでみる。

実に柔らかくて上質なヒレ肉が軽やかに揚げられている。

今度はソースを全体にかけてみた。なるほどトマトの酸味が効いていて、あっさり上品な味わいを演出。

ほのかにカレー粉の風味をまとった茹でキャベツも素晴らしい脇役。

カツ、そして口直しの味噌汁・漬物がライスを奪い合うが、交互に頂くことで重層的な満足感が積み重ねられる。

これまで私は味噌汁・漬物が供される洋食をどこか是としない潜在意識があったが、もんの定食においてはこの2つが唯一無二の存在感を放っていて、どうにも欠かすことができない。

改めて日本で独自に創り上げられた独自の洋食文化、欧風料理の奥深さを垣間見た気がした。

ちょうど食べ終わる頃、夜8時を報らせる掛け時計の音でそろそろお暇しなければならないことに気付く。

今日はまたひとつ愛すべきお店を知ることができて、大満足の一日となった。

是非近いうちにまた訪れてみたいと思う。

B様、改めてありがとうございました。

版画家・川西英によるロゴマーク。1桁少ない電話番号にも時代を感じる

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