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【芦屋】心揺さぶられた雨の土曜日、「芦屋・次郎」(後編)

2皿のアミューズですでに心を掴まれた私たち。しかし、コースはここから始まるということを忘れてはならない。

最初は「出雲・松本農園のグリーンアスパラガスと魚介のプレート」。

北海道産のホタテとウニ。さらにタイ、イカと沖縄県産のクルマエビ…だったかな。クルマエビは「油通し」をしているというが、中華でよく聞く「油通し」とは違うようで、訊くに和食の技法らしい。

山海の甘味がよくマッチしていて、素材の良さが前面に際立つ。見た目といい味といい、この季節に相応しい爽やかな一皿だ。しかし、日本列島は北から南までまさに食材の宝庫である。

ここでワインに切り替え。ワインリストを拝見する限り、赤白ともにボトルで10,000円以下がほとんどというリーズナブルさ。

今回はDomaine Leflaiveの「Macon Verze」(2016年)をセレクトした。

続いて、「ホワイトアスパラガスとフォアグラのソテー」。

緑と白、旬のアスパラガスを食べ比べできるとは思っていなかった。しかも全く異なるアプローチ。愉しいです。あくまで主役はアスパラガス。フォアグラを付け合わせにしてアスパラガスを頂くよう意識してみた。

ほろりと甘い穂先とシャキッと瑞々しい根元。この時期しか味わえない素材の持ち味をじっくり堪能できた。

「高知県産アマダイの鱗焼きにナスのコンフィ」。

こちらも季節感あふれる一皿。ふっくら柔らかい身と香ばしい鱗…まさに絶妙の仕上がりである。そして、ここでも素材の良さが際立っていた。

ナスのコンフィにはラタトゥイユ風の野菜(刻んだトマトとタマネギ?)がサンドされていて、これがまた爽やかな夏を感じさせてくれた。

「カナダ産オマールエビのローストにジロール茸」。

私にとって今回のハイライトはコレ。「次郎だけにジロールです」という小久江さん直々のサーブに皆顔がほころぶ。

オマールエビとジロール茸、さらにはエストラゴン。やはりこれは黄金の組み合わせだと再認識。ローストの火入れはレアな部分を残しており、プリプリした歯応えと甘味が素晴らしい。濃厚な卵まで素材を余すことなく味わうことができた。

「飛騨牛のポアレ サマートリュフ添え」。

ここに来てサッパリしたヘレ肉とは嬉しかった。ウマイ肉が食べたいとは言え、ここでサーロインでも供されものなら最後まで辿り着けないだろうし、ありがたみが半減してしまう。

このヘレ肉は本当にキメが細かくて美味しかった。そして黒トリュフよりむしろガルニの野菜たち。インカの目覚め、はなっこりーや黄人参。選手層厚過ぎ。いずれも味が濃くて飽きさせないよねー。

デセールは「マンゴーのムースにはちみつのアイス」。

サクランボの酸味が良いアクセントになっていた。

全体的に甘さ控えめで軽やかな味わい。このコースの〆を飾るに相応しい一皿だった。

最後は小菓子とホットコーヒー。

フィナンシェもギモーヴもほんのり温かくて、お心遣いに感謝。

総じて、最後まで美味しく楽しく、素晴らしい送別の時間を過ごさせてもらった。

食後は小久江さんをテーブルに迎えての談笑。アラン・シャペルのエピソードや「料理の鉄人」の裏話について、ユーモアを交えて披露してくれた。

また、「是非読んでみて」と、小久江さんが巻頭インタビューを飾った「Maruhari」という地域情報誌を手渡された。

そこで目に留まった、小久江さんの「トータリティ」ということばが胸にストンと落ちた。

確かにこの日の料理は、最初から最後までしっかりと抑揚・強弱がつけられていて、飽き疲れることなく全コースの流れを愉しむことができた。

さらには、予約時の電話対応から美味しい料理、良質な空間、スタッフの丁寧な接客、小久江さんの含蓄あるお話、(このあとの)最後のお見送りまで、すべてに抜かりがない見事なパフォーマンスだった。

いずれも小久江さんがトータリティを意識しながらコース構成やサービスに取り組まれた賜物が、我々の素晴らしいディナータイムであったことは間違いないだろう。改めて感謝申し上げたい。

次回は是非、カウンターで頂いてみたい。違う景色のなかにきっと新しい食体験が待っていることだろう。

ちなみにこの日の夜は興奮してか一睡もできなかった…。こんな経験は久しぶりだ。是非、いつまでもお元気で心揺さぶる感動を提供し続けてもらいたい。

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