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【神戸・ハンター坂】店主の美意識が際立つ孤高のオーセンティックバー、「Bar Le Salon」

初めてお邪魔したのは確か2009年。秋口、雨上がりの夜だった。坂からのぞく、温かくどこか上品なオレンジ色の光に惹かれて入店した。

私が「ル・サロン」に落ち着いた理由は2つある。

ひとつはバーテンダー・吉成さんの人としての魅力。

吉成さんは大学を卒業した後、友人が経営する喫茶店で店舗オペレーションを学びながら独学でバーテンダーの仕事を習得、28歳で独立開業に至ったまさに異色の経歴の持ち主だ。

誰に教わったワケでもないバーテンダーとしての所作やサービスはスマートでムダがなくお見事のひとこと。サラリーマンの私としても大変勉強になるのだが、会話がこれまた味わい深い。

店内の凛とした雰囲気に最初は少し構えてしまうものの、吉成さんの物腰柔らかな語り口が自然と会話を弾ませ、次第にこちらは本音を話してしまう。

時に真面目に、時には不真面目に話を聞いてくれるが、会話のなかで発されるその言葉一つひとつが本質を突いており、22年間のさまざまな経験に裏打ちされた含蓄を感じさせる。

ただただ飲みたい時は勿論だが、今の自分の立ち位置がこれでよいのか確かめたい時にも立ち寄れる、ル・サロンはいわば私の羅針盤的な存在なのである。

そして、もうひとつは唯一無二の世界観を愉しめること。

まずは空間を愉しみたい。

美しく磨き上げられたケヤキの一枚板のカウンターは人間の肌によく馴染み、一旦肘をつけば、その心地良さに自ずと心が落ち着く。

オレンジ色の光のなかで浮かび上がるカウンター奥の色とりどりのボトル。その後ろの白壁には竹があしらわれ、和の要素がしっくり馴染む。

テーブル席には薔薇の花。あえて一輪挿しであるところに、これまた日本のわびさびに通じる凛とした美しさを感じる。

すべてが大変ムーディーかつスタイリッシュであり、吉成さんの妥協ない美意識の賜物なのである。

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