続いては、出雲「松本農園」のホワイトアスパラガスにフォアグラのソテー。薫り高い黒トリュフをあしらって。
さっきの皿と合わせて、世界三大珍味を制覇した。
濃厚なフォアグラと甘く爽やかなアスパラの調和。わずかな岩塩が全体をしっかりまとめ上げていた。
魚のメインは和歌山・箕島で獲れたイシナギのムニエル。オマール海老のローストととともに。
イシナギとは別名モロコ、クエによく似た大きな高級魚とのこと。おそらく初めて頂いたのだが、なるほど、脂が乗っていてコクがある。身もプリプリしていて、大変味わい深かった。
オマール海老は言わずもがな。素晴らしい仕上がりである。
肉のメインは宮崎の牛ロース肉のポワレ 赤ワインソース。
肉質と火入れの抜群さよ。外は香ばしく中はとろけるように柔らかい。
メインが牛肉なんてベタでやだなと思ってた時期もあったが、この安定感、安心感。やっぱり美味いですよ。ソースも重厚です。脇を固める野菜も抜群に美味い。
カウンター越しに会話をしながら難なくこなして供するまでの一連の調理風景を見て、小久江さんの経験がものを言っている感じ。お見事です。
デセールは苺のムースに蜂蜜のアイスクリーム。
甘さ控えめで苺の酸味が際立つ。春のコースの締めくくりに相応しい一皿だった。
最後はプティフールに紅茶で終了となった。
食後は小久江さんと調理をサポートするお弟子さんを交えて色々談笑。
お弟子さんはハタチそこそこで、縁あって昨年小久江さんに弟子入りをされたのだそう。小久江さんのような生ける伝説に基礎固めをしてもらえるなんて、何と貴重な経験だろう。
イノベーティブの要素が強い、いま流行りの話題店で修業しなかったのは彼にとって正解だと思う。
経験上、イノベーティブのような料理はひと際目を惹くが、食べてガッカリすることが多い。なぜなら、見た目のインパクトに勝る味のインパクトがなく、そのほとんどはクラシカルな料理よりも完成度が低いからだ。
基礎がしっかりしていれば、クラシカルでもイノベーティブでも美味しいと思う。是非、グランシェフのもと、まずは最先端の技術よりもフォンやジュの習得に注力し、偉大な料理人になってください。
今回は前菜やフォアグラ、オマール等、初めて訪れた際のメニューと似たものが多かった。
しかし、である。
初回と同等、もしくはそれ以上の口福感・食後感を得ることができたのだ。コース料理でこのような経験をしたことは正直、あまり記憶にない。
それはやはり、「ウマイもんはウマイ」とでも言おうか、本当に美味しいものはいつ何時、何回食べても美味しいという証左なのではないか。
何だか料理の奥深さを思い知らされた一夜だった。
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