神戸の六甲山系と言えば、都心から非常に近い距離に位置することが魅力で、元町や三宮から少し坂を登れば、すぐに緑溢れる山道が現れ、都会の喧騒から逃れることができる。
神戸の人たちには「背山(はいざん)」として親しまれ、毎朝、一日の始まりに山登りをするという「毎日登山」の習慣が市民間で広く定着しているほどである。
そんな六甲山系のひとつ、再度山の奥座敷に懐石料理を供する隠れ家があるのをご存知だろうか。
1976年に片岡学さん・正子さん夫妻が創業した「鯰学舎(ねんがくしゃ)」という店である。
学さんはプロのジャズトランぺッター、正子さんも宝塚歌劇団で活躍した元女優という異色の経歴。
かつては二人だけで切り盛りし、店の近くで採れたたけのこ、山菜や川魚などを供していたが、現在は料理人が調理を担当している。
かねてよりうかがいたいと思っていたが、登山ついでに前を通るだけのウン十年。先日、ようやく念願叶い訪れることができたのでレポートしたい。
ちなみに移動手段はタクシーがベストだろう。最寄りの地下鉄・県庁前駅から海外移住と文化の交流センターを経由して20分程度で到着できる。
私は前日に散歩がてら徒歩で下見に行ったが、本格的な山道を軽装で登ったこともあり、1時間以上かかってしまった。徒歩はオススメしません。
店はよく手入れされた美しい純日本家屋。
涼しげな暖簾を潜り店内に入ると、個室に案内される。
耳を澄ますと竹林のさざめきやウグイスのさえずり、近くを行き交うハイカーの話し声が聞こえてきて、大変風情ある。
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