続いて供されたのはビーフシチューだが、これがまた驚きだった。
まずボリューム。
一皿の量が想像以上で、これで数千円なら決して高くはない。
そして肉。
フォークだけでホロリと解れる上質な黒毛和牛の三枚肉は抜群にジューシー。口内で旨味が弾け続ける。
さらにデミグラスソース。
今まで経験したことがないくらいに円やかで重層的。ずっと舌の上で転がしておきたいと思ってしまった。つべこべ批評家ぶるのもおこがましいので、まず味わっていただきたい。
さらにさらに付け合わせ。
パスタにポテサラだったが、これがまた抜群。
先ほどのホワイトアスパラガスもそうだが、下町の洋食ではなく、きちんとしたフレンチの味わいがベースにある付け合わせだ。
特にポテサラの酸味とデミグラスソースが混じり合う境界領域はこれだけでワイン2杯はいけると思った。
シチューで感動したあとのオムライスも期待を裏切らなかった。
これもボリュームがスゴくて実質ひと皿2人前といったところか。
楽しいパフォーマンスも良かった。
まずケチャップライスだけが皿に山型に盛られる。
そこに程なくして「お待たせしました〜」というシェフのお茶目な掛け声とともに、オムレツがオン。
シェフがオムレツに包丁を入れると、まるで花が咲いたようにふわとろ半熟たまごがライスに覆い被さった。
たっぷりのデミグラスソースにグリンピースをあしらって、はい出来上がり。
きっとSNSができるずっと前からのパフォーマンスなんだろうなぁ。何だかステキだ。
そして何よりもウマかった。
ケチャップライスには貴重な天日干し米を使用、米一粒一粒が立っている。具材はチキンの代わりにポーク。酸味よりも旨味が勝る。
包み込み込むたまごの柔らかさ、円やかさ。そこにまた重なるデミグラスの円やかさ、コク深さ。
口直しにはたっぷり野菜のピクルス。
これがまた美味で、飽きさせない工夫に余念がない姿勢に脱帽した。
何と奥深い料理だろう。素直にそう思った。