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神戸・元町「グリル ロッグキャビン」が閉店

ママは75歳くらいだったと思うが、小柄で可愛らしい方だった。ショートカットに眼鏡でいつも白衣を着ていた。

ママの接客は実にお見事だった。

お客のことをよく覚えていたし、あの年齢でないと醸し出せない余裕と落ち着きがあった。そして、天賦の人懐っこさとユーモアがあった。

例えば、幼児連れの3世代家族には「お子さん、大きなったねぇ。おじいちゃんによく似てきたわ」

60前後のお一人男性客には「あら、久しぶりやね。元気やった?」

カップルには「彼女、可愛らしいねぇ。美男美女でよぅお似合い」

といった具合に、常連にも一見にも分け隔てなく接してくれた。基本はタメ口だがちゃんと気遣いと品性があって、温かさに溢れていたから、話しかけられると皆笑顔になった。

とある日、私のお会計は¥1,800だったが、鞄から財布を出すやいなや、目の前には¥200を乗せたママの手。悪戯っぽい満面の笑みだったので、私も思わず笑いながら¥2,000を取り出した。

最後に店を訪れたのは昨年8月。

この時もママは普段通りだったが、笑顔でこんなことを言っていた。

「年々身体が言うこと聞かなくなってる。いつまでできるか分からんわ。老体に鞭打って何とかやってます」

その4ヶ月後の12月29日にロッグキャビンは閉店した。今思えば、すでに決意を固めていたのかもしれない。

文夫さんやママのことだから、特に大きな告知もせず最終日も普段通りに営業されたのだと察するが、せめて最後にもう一度訪れて謝意を伝えたかった。

こうして数十年にわたり、私にとって「あって当たり前」だった店がなくなってしまった。

店を訪れたのは20回に満たないほどだと思うが、毎度幸せな時間を提供してもらったことに心から感謝したい。

そして、お二人ともまずは長年の疲れを癒して、心置きなく悠々自適に幸せな時間を過ごしていただきたいと思う。

ありがとうございました。

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