先日、数年ぶりにディナーにうかがうことができたのが、神戸・元町の「エスパイクックコウベ」。
イタリア、フランス、スペインで計9年近く修業を積んだ南野裕輝さんが2015年にオープンしたイタリア料理店である。
仕入れからサービスまで全て一人で行うゆえ、週の前半は仕込みに費やし後半のみ営業するという独自スタイルを開店当初から継続。
その手間暇惜しまぬストイックな姿勢と海外経験で培われたバックグラウンドが相まって、他店では味わうことができないコース料理が供されてきた。
しかし、2020年冬からのコロナ禍を機にコース営業を一時中止、テイクアウト専門の「イタリア菓子のススメ」に業態変更。
「カンノーリ」や「グバーナ」など、日本にあまり馴染みがないイタリア伝統菓子の認知に一役買った。
現在はコース営業を復活し時折菓子販売も行うという、コロナ禍を経て二刀流に落ち着いている。
というワケで、早速、今回頂いた夜のコースをご紹介したい。
当日は蒸し暑い日だったこともあり、まずはお決まりの泡で乾杯。
ウマイ。整いました。
程なくして運ばれてきたスターターは「海老、ニラの花、インカの目覚め」。
食材一つひとつが実に滋味深い。そして全体をまとめ上げるコンソメスープの優しさ。
日本料理の椀物にも通じるアプローチで、まさに和洋折衷の理想型と言えよう一皿。
染み渡りました。
「一皿目が勝負だと思って、毎回色々と考えています」と南野さん。
のっけから胃袋を掴まれた。
続いて、「鮑の肝ソース」。
串揚げではなく、パン粉を纏わせて仕上げている。
鮑の柔らかいこと。そして肝の香りが香草風味のパン粉と相まって、より重層的な味わいに。
一串だけでこれほど複雑な表現ができるのか。
「野菜のサラダ」。
こちらは創業当時から供されている一皿と記憶している。
約10種の神戸近郊の野菜がふんだんに用いられ、ラインナップにドラゴンフルーツが含まれている点は何ともユニーク。
下に敷かれたビーツのドレッシングもイイ仕事をしている。