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【神戸・元町】私にとってのビストロの教科書、「Bec」

2012年2月、私の食体験に大きく影響を与えるお店と出会った。

神戸は元町の「Bec」である。

JR元町駅から鯉川筋を北上し、小径を入ったところにひっそりと佇む小さなカウンタービストロは、今や日本全国からお客が集まる繁盛店となった。

イイ味が出だした看板

2011年5月にオープン、私が最初に訪れたのは開店から9ヶ月後の翌年2月。

20時前だったが、店内は先客が1名のみという寂しさ。真冬ということも手伝ってか、3時間ほどの滞在で我々の後に続く客はなく、間違い電話が1本入っただけだった。

ところが、そんな状況が1ヶ月後には一変する。当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったグルメ口コミサイト「食べログ」で、突如として4.40(5点満点)というハイスコアを叩き出し、全国ランキングにも顔を出すまでの評判を得るようになったのだ。

当時11席のカウンターは地元客よりも出張者や旅行者で連日満席状態に。民芸品を売る外国人の行商が乱入してきたり、中学生が来店するハプニングもあったが、その加熱ぶりは凄かった。

それから7年あまり、ようやくフィーバーもひと段落し、今は根強い常連客と鼻の利く新規客で賑わう、イイ感じの状態となっている。

Becができるまでの神戸のフレンチシーンと言えば、「ジャンムーラン」や「コムシノワ」の流れを汲むレストランスタイルのお店が多かった。

しかし、Becの登場を機に、カウンタースタイルやビストロの店が神戸で市民権を得て急増した。

店主の岸本達哉さんは神戸のカウンタービストロの先駆者と言っても過言でない。

そして、私自身、そのカウンタービストロの醍醐味を岸本さんに十二分に教えてもらった一人である。

それまでドレスアップして肩ひじ張って食べるレストランスタイルを偏愛し、低温調理や液体窒素に恋をしていた私が、Becのパテを食べ、グラタンを食べ、ワインを飲み、カウンターで隣に座るいかりや長介似のおじさんとわいわい(時に猥々)愉しめるようになった。

料理とお酒の一番のマリアージュ(相性の良さ)はビストロにあると確信させられた。

おまけにおじさんとのマリアージュまで付いてきた。

「ビストロって愉しい」…心底そう思えるようになったのだ。

岸本さん、ありがとうございます。

温かくて薄暗い照明はフランスの片田舎で出会ったビストロの店内をイメージしたのだとか

 

 

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