Skip to content

【神戸・元町】私にとってのビストロの教科書、「Bec」

さてさて。話はなかなか尽きないのだが、ここで私がお勧めするBecの愉しみ方を記しておきたい。

ポイントはズバリ3つ。

まずは、①空間を愉しんでいただきたい。

ひとえに「空間」と言っても、それはインテリアや調度品ではなく、レイアウトと岸本さんの動きを意味している。

いきなりマニアックなハナシで申し訳ないのだが、すべてにおいて「機能的」、「合理的」という言葉がよく当てはまり、見ていて実に勉強になる。

こちらの物件は以前、人気のうどん店が入っていたが、Becができるにあたり、東向きのカウンターをあえて西向きにして一から造りなおした。

薄暗い店内に白い皿が映える

うどん店の頃の、セルフのトッピングスペースや給湯器が所狭しと配置されていた時よりも、随分とすっきりし広く感じられる空間に生まれ変わった。

そして、この空間が奇跡のワンオペ営業を可能にしている。

店内全景

岸本さんが自分の動きやすさにとことんこだわり、厨房の広さ、カウンターの幅、席数、動線…全てが緻密に計算されたものである。

洗い場はバックヤードに配し、営業中は調理と接客だけに集中する。

店内がどれだけ忙しい状態になっても厨房の中は常に整頓された状態でキープされている。

マグネットに壁に貼り付けられた調理器具

岸本さんがすべてを同時に、あまりに平然とこなしているので気付きにくいのだが、そうはできるもんじゃない神ワザだと思う。

満席の状態で「パテ早く~」なんてのたまうのは野暮のすること。

躍動する岸本さんの姿を肴にワインを頂きながら、ゆっくり料理を待とうではないか。

 

 

続いて2点目、これは言うまでもないが、②本格ビストロ料理を愉しんでいただきたい。

奇をてらったメニューは一切なく、トラディショナルな直球料理が15種類ほど並ぶ。

とある日のメニュー

「引き出しが少ないんですよ」と岸本さんは謙遜するが、これはワンオペを実現するために計算し尽くされた布陣。

オープン当初と比べると、「塩漬け豚の煮込み」や「ステックフリット」など、淘汰されてしまったメニューもあるが、今は残ったメニューがマイナーチェンジを繰り返し、どんどんと収斂されてきている状態。

本日はそのいくつかをご紹介しよう。

「キャロットラぺ」。

キャロットラペ

オレンジジュースの香りが食欲を駆り立てる。ニンジンは以前よりも細く刻まれ、盛り付けも塩沢ときみたいになってきた。

「田舎風お肉のパテ」。

田舎風お肉のパテ

キャラじゃないのに、あえて「お肉」とか言ってるところが可愛い。時折、肉の配合や硬さが変わる。変えなくても十分安定していて美味しいのだが、変えるところが心憎い。塩の量も以前より随分減った。

「じゃがいものグラタン」。

じゃがいものグラタン

グラタンと聞けばトマトソースやマカロニを期待される方も多いが、具はじゃがいものみ。じゃがいもは3時間ミルクで煮込まれ、チーズがゆるーく絡んでホクホクの状態に。

天津飯…ではなく、「オムレット」。

オムレット

色とフォルムが食欲をそそる。そして、チーズの塩気が白ワインを誘う。以前は半熟のゆるい状態でパンと一緒に頬張ったりしたものだが、今はかなりしっかり目に焼いてあり、これだけでイケる。

「ホロホロ鳥のコンフィ」。

ホロホロ鳥のコンフィ

以前はスタウブ鍋を使ってキャベツと煮込んで供されたこともあったが、今はコンフィ一本。ガルニ(付け合わせ)さえ削ぎ落とし、身の旨味、皮の香ばしさをしっかりと堪能できる。見事な火入れ技術だ。

「淡路牛ホホ肉赤ワイン煮」。

淡路牛ホホ肉赤ワイン煮(この皿での提供は終了しているはず)

こちらもガルニがなく、肉本来の旨さがストレートに伝わる。上質なワインで煮込んであるため、さらりとした舌触りに仕上がる。塩の量も当初に比べると幾分減ってきた気がする。

「ビュルゴー家シャラン鴨」。

ビュルゴー家シャラン鴨

切り方が年々変化してきている。4,50分かけてゆっくり火を通した結果がこの美しいピンク色。皮の香ばしさと肉のジューシーさが実にお見事。やはりここは赤ワインだろう。

「ムール貝の白ワイン煮込み」。

ムール貝の白ワイン煮込み

季節限定、しかも唯一の魚介系メニュー。調味料は塩のみ、タジン鍋を使って蒸し上げる。これだけで白ワインを6杯も飲んでしまった、キケンな一皿。

Pages: 1 2 3

One Comment

コメントを残す