本日は一旦このあたりで留めておこうと思うが、メニューは1年を通してほぼ同じラインナップ。そして、驚くことにほとんどの料理が塩・コショウのみの味付けで成立している。
それなのに飽きることがないのは、逆に超シンプルだからこそ。
凝りに凝った味付けや少量多皿群は時に食べ疲れしてしまう。
あくまで素材を重視し色々試したいところをあえて控える引き算の味付け、そしてそれを少数精鋭の皿でストレートに伝えていることが、「味噌汁と白飯」のような、毎日食べたくなるマリアージュを生み出しているのではないか。
最後に3点目は冒頭部分と内容が被るが、③ワインと会話を愉しんでいただきたい。
ビストロ料理を愉しむためには、たとえ1杯でもワインを頂くのがマナーと私は考える(アルハラ?)。
なぜならシェフもワインとのマリアージュを前提に料理を構成しているに違いないし、呑まないと本当のビストロの愉しみ方・醍醐味が分からないだろうから。
ワインは完全におまかせで供される。
私はワインに対する教養がないのでありがたいことであるが、うんちくがある方はその点合わないかもしれない。
これまではずっとLengad’òc(ラングドック)やCôtes du Rhône(コート・デュ・ローヌ)の伝統的なものが中心だったが、意外や意外、最近ではナチュールなんかもラインナップに入れている。
骨太なビストロ料理でどんどんお酒が進んでゆく。
愉しくなっちゃったところで、岸本さんが手隙になれば会話も愉しめるだろう。
教養とユーモアに溢れ、どんなジャンルの話でも拾ってくれる…はず。
・大相撲好き
・学生時代の得意教科は物理
・ファッションセンス抜群
・最近はサーフィンに夢中
…どうです?何だか面白そうな方でしょう。
そして、先述、他のお客とのマリアージュもBecならでは。
お酒で陽気に愉しくわいわい。
岸本さんが話を振って一人客どうしを繋げたりして、皆で盛り上がれることなんてのもたまにある。
総じて、Becは私にビストロの愉しみ方を叩き込んでくれた教科書のようなお店。
そして空間・料理においてすべてがシンプルで潔く、全く無駄がない。
お店は店主の人間性を表すというが、まさに岸本さんの生き方を体現している。
「今の自分の立ち位置はこれでよいのか?」
飲食以前に、そう自問自答しに行くため、私は毎回このお店に足を運んでいるのかもしれない。
[…] この日は私が最も敬愛する神戸・元町のビストロ「Bec」の創業11周年記念日。 […]