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【神戸・県庁前】20年来多くの刺激を与えてくれる魅惑の社交場、「idéal」

2000年3月、神戸。ようやく1年間の浪人生活を終え、同じ予備校の男友達とお疲れ様ランチをすることになった。

まだ未成年のメンズ2人が生意気にも北野のフレンチレストラン「レシピ」へ。金の扇が飾られたカウンター席に並んで前菜、メイン、デザートのショートコースに舌鼓を打った。

そのあと、友人が「ついこの前、ヨーロッパ中心にインポートウェアやアンティーク雑貨を取り揃えた店がオープンしたので行こう」と言う。当時の私と言えば、洋服はモトコーの古着で一人暮らし経験はゼロ。ヨーロッパの服や雑貨など触れたこともなければ興味すらなかった。とにかく言われるがままに着いて行くことにした。

店は鯉川筋の雑居ビルの3階にあった。エレベーターを上がると、目の前には何とも未来的な雰囲気のアクリル扉に「idéal(以下、イデアル) 」の文字。その向こうには色鮮やかな洋服や雑貨が覗いている。

恐る恐る扉を開いて入店。これが私にとって初めて上質な衣服や雑貨に触れた瞬間であり、イデアルとのファーストコンタクトだった。

イデアルは有名レコード会社で大物アーティストのプロデュースを手掛けた藤本武志さんとアパレル会社で営業等を担当した奥様、佳代子さんによって創業。店主は赤いデザイナーズチェアに鎮座する二人の愛犬、シェリくんだ。

2005年8月「Meets Regional 神戸本」より。掲載情報は当時のもの

当時のイデアルのセレクトは他店とはひと味もふた味も違っていて、店内にはPierre Cardin(ピエール・カルダン)のヴィンテージスカーフやLIP(リップ)のアンティーク腕時計、当時はまだ日本未入荷だったMandarina Duck(マンダリナ・ダック)の鞄、Macintosh(マッキントッシュ)のゴム引きコートなどが所狭しと並んでいた。

私はここで沢山のブランド物に触れ(高くて購入できなかったが…)、二人の軽妙かつ興味深いトークから衣服・雑貨の知識や音楽・サブカルチャーのこと、さらには昔の神戸のことなど、実に様々なことを楽しく学ばせてもらった。

仮にこの出会いがなければ私の感性はもう少し鈍いものになっていたに違いない。改めてここで感謝を伝えたいと思う。

さて、今年でめでたく20周年を迎えたイデアルだが、実は3年前から横のトアウエストで新たにバーラウンジを展開している。もともとイデアル店内で常連客が集まってワインを愉しんでいたことがきっかけで生まれた社交場である。

とは言え、開店から3年が経った今は鯉川筋からの常連客よりも新規のお客の方が多くなった印象。

ありがたいことにチャージはなし。カウンターには妖艶美人の佳代子さんと甘いマスクの共同経営者、不惑の荘文人さんが立ち、会社員からこの界隈の飲食店経営者、雑誌編集者やDJ、デザイナー、学生まで、夜な夜な個性的なメンツが集う、来るもの拒まずの店である。

カウンター席
佳代子さん近影。2017年6月「タイムトリップ神戸70-80’s」より

ドリンクメニューは二人がセレクトするシャンパン、ワイン、ビールにカクテル各種とベーシックなモノ。

私のお決まりは白ワインにチーズ盛り合わせ。赤を基調にしたムーディーな雰囲気の空間、渡仏経験が豊富な佳代子さんのトーク…何となくココではそんな飲み食い合わせがシックリ来る。

とある日、フランス帰りの佳代子さんがお客に振舞ってくれたチーズたち。チーズ盛り合わせとは別モノです

また、ビールはサッポロ赤星とキリンラガーのほか、世界各国のものを常時5~8種類セレクトしているのが特長。もし複数人で訪れるなら「イネディット」があるか尋ねてみては。

イネディットはかのスペインの伝説的レストラン「エル・ブリ」のシェフ、フェラン・アドリア氏が「ワインと同様に料理を愉しめるビールを」というコンセプトで開発したビール。フルーティで香り高い味わいは勿論、料理がなくても愉しめる。750mlのボトル提供でとてもリーズナブル。奥のソファー席で気軽にワイワイできる。

ソファー席

店舗は2階だが、昨年末、下に活きの良いイタリアンができたので、イデアルで1杯引っ掛けてから、もしくはハシゴして2軒目のイデアルなんて使い方もできそう。

店を訪れるといつも佳代子さん、荘さんとの三人トークから始まり、やがては他の常連や一見さんを巻き込む流れに発展。話はどんどん脱線して思わぬ方向で盛り上がり、その都度、新たな出会いと発見が生まれる。イデアルとはそんな場所だ。

これからも末永く衣・住は鯉川筋、飲はトアウエストで、私の感性に刺激を与えて続けてもらいたい。

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