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【神戸・三宮】確かな技術と構成力。気鋭の注目店、「Craft」

しかしある時、丸山さんが神戸に帰ってくるタイミングで一緒に食事をした際、独立するための物件探しをしている最中だと聞いたのだった。

その後、最終的に2つの物件で悩みに悩んだ末、この不動坂の地で2018年4月、クラフトをオープンするに至った。

それから2年、丸山さんのウマイ料理と奥様の悠さんの温かく爽やかな接客がじわじわと評判を呼び、クラフトは人気店の仲間入りを果たしたのである。

高校時代からのお付き合いでゴールインしたという丸山さんご夫婦

また前置きが長くなってきたので、そろそろ丸山さんの料理について書きたい。

店はグルメサイトや雑誌ではイタリアンやビストロに分類されているものの、積極的に和のテイストやスパイスの香りを取り入れ、ジャンルに縛られないメニューを展開している。

とはいえ、今神戸で流行りのガチガチのフュージョン料理とは全く異なり、サラダやパスタ、ローストなど、至って定番的なメニューに丸山さんのセンスで、ある意味、ゆるくアレンジを加えている。

そんなスタイルが私には大変新鮮に感じられるのだ。

ではここから、とある日に頂いたメニューをもとにほんの一部をご紹介。

まずは前菜で供された「イチジクのバルサミコマリネと生ハムとゴルゴンゾーラのムース」。

さまざまな食材がもつ旨味や甘味、香り、食感を一つの料理にまとめ上げた、初っ端から丸山さんの真骨頂とも言えるべき一皿だ。

確かに生ハムメロンもウマイが、イチジクだとより繊細な味わいになる。バルサミコのサッパリ感にアーモンドの香ばしさ、ミントの爽やかさがバランスよく配され、辛味よりもクリーミーさが際立つゴルゴンゾーラが全体を調和させる。フルーティーなタスマニアマスタードの粒々食感もまた、心地が良い。

色々な計算の跡が読み取れて、少量でもかなり楽しめる一皿に仕上がっている。

スペイン・ガリシア「Terras Gauda」の白

次は温かい前菜、「グリーンアスパラのソテー 4種チーズのスクランブルエッグソース」。

まず、アスパラの肉厚で甘く瑞々しいこと。素材の底力に驚かされる。

スクランブルエッグにはゴルゴンゾーラ、パルミジャーノ・レッジャーノ、ピエダングロワとミモレットを。それぞれ個性的なクリーミーさ、風味、塩気が卵と合わさって深く重層的な味わいを生み出している。香ばしいクルミも絶妙なアクセントになってワインがグイグイ進む。

スペイン・バレンシア「Panxut」の赤

パスタは「炙り鱧と焼き茄子の鱧だしソース フェットチーニ」をセレクト。

やっぱり関西と言えば鱧だが、クラフトで頂けるとは思わなかった。

丁寧に骨切りされた新鮮な鱧は皮目を香ばしく焼き上げプリプリの食感。フェットチーニは鱧のスープがよく染みて非常にアッサリ軽やかに仕上がっている。爽やかなミョウガ、まろやかな茄子のペーストと、和でも定番の旬な食材でまとめるところにも丸山さんのセンスの良さが光る。

そして、いよいよメインの「仔羊のロースト ブラックオリーブソース」。

クラフトの定番メニューだ。肉の焼き上がりは絶妙のミディアムレア。不要な脂をしっかり落として、ジューシーかつヘルシーに仕上がっている。この加減には毎度感心させられる。

何も付けずこのままでも十分にいけるが、塩とオリーブソースを添えているのはゲストそれぞれの味覚に配慮してのこと。付け合わせには野菜の揚げ焼きが。いずれも生産者にこだわり、素材の滋味深さがストレートに伝わってくるものばかり。シンプルなメニューにも丸山さんのさまざまな想いが込められているのだ。

イタリア・トスカーナ「Belcore」の赤

ご馳走様でした。

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