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名店「コート・ドール」の閉店

東京・三田のフレンチの名店、「コート・ドール」が明日をもって閉店する。

シェフの斉須政雄さんは御年75歳。

斉須さんの経歴は様々な書籍に詳しいので詳細は割愛させていただくが、近年ではTBSドラマ「グランメゾン東京」で木村拓哉演じる尾花夏樹が修業したフランス・パリの三つ星「ランブロワジー」がシェフのベルナール・パコー氏と斉須さんで立ち上げた店ということもあって、再び注目を集めたことは記憶に新しい。

パリから帰国後、三田の地でコート・ドールを開店して39年。店はたちまち評判を呼び、今では日本全国からグルマンや料理人が通うほどの大名店となった。

斉須さんの料理はひと言で言うと、質実剛健。

どの皿にも丁寧な仕事の跡が窺え、何十年と変わらないプロセスを繰り返してきたからこその味の収斂と見た目の洗練がある。

私はランチタイムしかうかがったことがないのだが、十分にその真髄を垣間見ることができた。

なかでも、野菜のエチュベは斉須さんが20代の頃からずっと作り続けてきた一皿。

野菜を丁寧に面取りし、火を通す際は、硬いものから底にして、時折ポジションを入れ替える。

数日間、漬け込む際にも上下ポジションを入れ替えながら煮汁をかけたりしながら微調整を繰り返す。

お客に供する前には、必ずシェフ自らオイルや塩で味の調整を行う。

といった具合で、日々のルーティンを繰り返して組み立てられた味は実に重層的で味わい深いものになる。

今の時代、高級食材を多用し、見た目も絢爛豪華なフレンチが耳目を集めているが、本当のご馳走とは、ごくごくありふれた食材の持ち味・旨さを人の手で最大限に引き出した料理なのだと改めて実感させられた。

このような店が閉店してしまうのは非常に残念だが、斉須さんの薫陶を受けたシェフたちが今も全国の厨房に立ち続けている。

麻布台「パトゥ」や北海道・札幌「クネル」、大阪・西天満「ラ・ボンヌターシュ」…等々、実に名店揃いである。

時間はかかるが、是非色々調べて訪れたい。

斉須さん、スタッフの皆さん。

39年間、本当にお疲れ様でした。

肩の荷を下ろして、しばらくゆっくり休まれてください。

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