神戸グルメについて、2回目のマスタベーションします。
前回は神戸のグルメは神戸港の発展により、特に「牛肉食」と「洋食」の分野で開花したことを記した。
「牛肉食」においては、その後、神戸ビーフという強力な世界的ブランドを後ろ盾に、ステーキ専門店の形態をとる店が増えていった。
自宅に残る最も古い神戸グルメ関連の出版物、1976(昭和51)年版の「神戸味覚地図」では、掲載されている全84店中、ステーキ専門店として、「麤皮(あらがわ)」、「三門」、「コウベステーキ」、「みやす」、「フック東店」の5店が確認できた。
また、1982(昭和57)年版の「神戸味どころ」では、全148店中、「レストランフック」、「いしかり」、「神戸館」、「大井肉店」、「おゝ川」、「ハング」、「但馬」、「レストランKIMM」の8店が確認できた。
現在はすでに閉店してしまっているお店も沢山あるが、今も神戸では沢山のステーキ店が繁盛している。
例えば、老舗では「モーリヤ」、「かわむら」、「雪月花」、「和黒(わっこく)」、比較的新顔では「十河(そごう)」や「Ishida.」といった本格ステーキ専門店から、ほぼほぼ観光客・海外インバウンドに特化して成功している「ステーキランド」まで、神戸のステーキは今や神戸グルメを語る上では外せないジャンルとなっている。
続いては、「洋食」。
上記「神戸味覚地図」では、「ケーンズ」、「神戸キチン」、「テキサスタバーン」、「伊藤グリル」、「ハナワグリル」の5店を確認できた。
「神戸味どころ」では、「グリル十字屋」と「明治屋中央亭」の2店のみと期待外れの掲載数だったが、計7店中4店が掲載から約40年経った今でも営業を継続していることは特筆すべきだと思う。
ここで、今も現役の神戸の洋食店の創業年をざっとまとめてみた。
1923(大正12)年 「伊藤グリル」
1931(昭和6)年 「ハナワグリル」、「御影公会堂食堂」
1933(昭和8)年 「グリル十字屋」
1936(昭和11)年 「欧風料理もん」
1940(昭和15)年 「グリル金プラ」
1950(昭和25)年 「ロッグキャビン」
1952(昭和27)年 「グリル一平」、「神戸キチン」
1961(昭和36)年 「洋食の朝日」
1965(昭和40)年 「グリルミヤコ」、「洋食ゲンジ」
1998(平成10)年 「グリル末松」
1999(平成11)年 「洋食屋双平」
こうして見ると創業50年以上の店がずらりと並び、神戸の洋食店は実に息が長いことが分かる。
洋食が市民文化に広く浸透している証左であり、京阪神では「和食の京都」、「粉モンの大阪」との差別化を図り、「洋食の神戸」としてその地位を築いてきたことが窺える。
それでは、現在の神戸グルメの輪郭を考えるとき、この「ステーキ」と「洋食」の2ジャンルだけがダントツに際立っているのかと言うと全くそうではない。
やはり開港によって海外から様々な食文化がもたらされた結果、様々な国・ジャンルの料理店が勃興してきたとともに、国内でも京都や大阪で修業した料理人が懐石や割烹の味を紹介するなどして、独自の食文化が形成されてきた。
しかしそんな中にあって、「ステーキ」、「洋食」と肩を並べるまでに成長・成熟した分野が2つあると私は考えている。
「中華料理」と「フランス料理」である。
それでは続きは次回、神戸の中華料理について考察していきたいと思う。